『翳ある墓標』/鮎川哲也

03 20, 2006
4594034047翳ある墓標―昭和ミステリ秘宝
鮎川 哲也
扶桑社 2002-11
自己評価

トップ屋集団「メトロ取材グループ」の杉田は、同僚の高森映子とともに西銀座のキャバレーを取材するが、それに応じてくれた映子の友人のホステス“ひふみ”が、翌日、熱海沖合で水死体となって発見された。自殺という警察の判断に納得のいかない映子は独自に調査を開始するが、今度は彼女が何者かに殺害されてしまう―。映子の遺したダイイング・メッセージを手がかりに、杉田がたどりついた意外な真相とは? デビュー以来、五十余年にわたって本格ミステリ界をリードしつづけた巨匠の第八長篇。
刑事でも探偵でもなく、「トップ屋」が主人公の、この作者にとっては珍しいノンシリーズもの。些細な手掛かりから容疑者を追い詰める手腕はさすがの一言に尽きる。

ニコライ堂の鐘の音、ダイイング・メッセージ、アリバイ崩しと山場は三つあるが、例によって派手さはなくじっくり読ませるシーンとなっている。「トップ屋」を主人公にしたことで、刑事や探偵にはない方法で捜査していくプロセスも面白い。やはり鮎川作品の醍醐味は、偽装アリバイが「がらがら」と音をたてて崩壊していく様だろう。この音の心地よさは、他の作者には決して真似できない鮎川の代名詞であり、神髄でもあると思う。

残念なのはラスト。がらがらと崩壊した後に、相手側に扉をバタンと閉められてしまったような感が残る。また、本作品には、作者自身が翻訳した海外ミステリ短編も収録されているが、話自体は面白いのだが、翻訳にやたらめったら漢字を当ててあるので、読むのに閉口してしまった。
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