『仮面幻双曲』/大山誠一郎
![]() | 仮面幻双曲 大山 誠一郎 小学館 2006-06 |
時は戦後まもなく。ある地方都市での出来事。占部製糸は紡績会社としては名の売れた企業だった。占部製糸では双子がトップにつくと栄えるという歴史があり、社長はかつて仲違いをした弟の双子の息子たちに会社を継がせた。しかし、その双子の兄弟はあることから諍いを起こし、弟は家を出た。弟は東京で整形手術を受け行方をくらませた。そしてその弟から兄への殺人予告が届く。社長である兄からボディーガードを依頼された川宮兄妹だったが、寝ずの番に就いたその夜に兄は殺されてしまった。弟が殺したのか……。容疑者にはアリバイがあり捜査は遅々として進まない。そして第二の殺人が起こった。
横溝の雰囲気をなぞっているような感がある。舞台が地方のせいか、全体的にのほほんとした印象。これといった山場もなく、きりりと引き締まるシーンも見当たらない。が、読書そのものはさくさくと進む。筆致は真面目だが、描写がなおざりであっさりし過ぎている。シンプルと言えば聞こえはいいが、事実だけを淡々と綴っているようで面白味がない。心理描写がその役割を果たしていないので、真犯人の動機が判明しても、ただぽかんとするだけ。トリックに対するスタンスには感心した。思いきったネタを巧く組み合わせてある。プロットをきちんと練り上げ、そこから外れることなく、最大限活かせるようにストーリーを作ってある。しかし、簡素な描写のせいで、私と物語の間に壁が出来てしまったので、探偵役が熱弁をふるって真相を述べたところでいまいち盛り上がらない。それでも、全体的に好印象だったし、久々に面白い本格ミステリを読んだ気がする。今後の作品に期待。


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