『退職刑事』/都筑道夫
![]() | 退職刑事 (1) 都筑 道夫 東京創元社 2002-09 |
かつては硬骨の刑事、今や恍惚の境に入りかけた父親に、現職刑事の息子が捜査中の事件を語ると、父親はたちまち真相を引き出す。曰く男物の下着ひとつで死んでいた女、また曰く壜づめの密室作人。論理のアクロバットを駆使した国産《安楽椅子探偵小説》定番中の定番として揺るぎない地位を占める、名シリーズ第一集。
刑事の息子から事件の詳細を聞き、最終的に真相を引き出すパターンは『ママは何でも知っている』を連想させる。息子に二、三の質問をしたのち論理的に事件を解決してしまう手際の良さも共通しているが、ブロンクスのママがやや劇的なのに対して、この退職刑事はこつこつ型で、どちらかというと地味な印象。でも気がつけば隙もなく推理のプロセスが出来上がっているのだから、その手腕はお見事と言うしかない。同系の国内ミステリがどれくらい存在するのかは知らないが、論理の組立や完成度からいってもトップクラスに入るのは間違いない。
秀作揃いの中でも気に入っているのは『ジャケット背広スーツ』。『九マイルは遠すぎる』を彷彿とさせるこの作品は、“安楽椅子探偵もの”という観点から見れば最も魅力的に思えた。

秀作揃いの中でも気に入っているのは『ジャケット背広スーツ』。『九マイルは遠すぎる』を彷彿とさせるこの作品は、“安楽椅子探偵もの”という観点から見れば最も魅力的に思えた。

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