『暗号名サラマンダー』/ジャネット・ターナー・ホスピタル
![]() | 暗号名サラマンダー ジャネット・ターナー・ホスピタル 文藝春秋 2007-03 |
テロ集団「ブラック・デス」に乗っ取られた旅客機。犯人は乗客もろとも機を爆破した。生存者は子供たち22名のみ。それから13年。遺児のひとりサマンサが事件の裏を追う──乗客の一部は犯人に拉致されたという。彼らの身に何が? 「サラマンダー」「シロッコ」なる工作員は何者か? 陰謀の正体は? 鍵は謎の文書とビデオ・テープ。不審な死を遂げた政府機関職員が息子ローウェルにそれを託した。だが調べを続けるサマンサとローウェルに黒い魔手が迫る。逃避行の中でふたりが辿り着いた真相とは──。
スパイものとしての展開に、もう少し拡がりがほしかった。序盤から面白く読めたので、過剰に期待してしまった自分が悪いのだろうが、本作品の“重い部分”の比重が多くなるにつれ、徐々にスピードダウンしてしまった気がする。陰謀の全体像が見えないうちは、どうしてもその首謀者の解明に意識がいってしまう。作者の文章は読みやすく、描写も腹八分目で気に入ってはいたのだが、個々の複雑な部分に迫るタイミングが早かったと思えてならない。首謀者探しは小休止し、犠牲者となる人物の背景が語られるのだが、この辺りから作者と私の間で少しずつ温度差が広がっていった。その間にも小さな謎が出現したりと、吸引力は相当なので飽きることはなかったが、その謎のほとんどが謎の状態で終わったことにも拍子抜けしてしまった。よくできた作品だとは思うが、“傑作”という評判には納得しかねる。そう思う適正が私にはなかったのだろう。


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