『殺人者の顔』/ヘニング・マンケル 

Posted at 2007/12/25
Tb(1)Com(4)
4488209025殺人者の顔
ヘニング・マンケル
東京創元社 2001-01

雪の予感がする早朝、小さな村から異変を告げる急報が入った。無惨な傷を負って男は死亡、虫の息だった女も「外国の」と言い残して息をひきとる。地方の片隅で静かに暮らしていた老夫婦を、誰がかくも残虐に殺したのか? 燎原の火のように燃えひろがる外国人排斥運動の行方は? イースタ署の面々が必死の捜査を開始する。スウェーデン警察小説に新たな歴史を刻む名シリーズ開幕。
このシリーズの特徴は、土地と人物だと思う。スウェーデン南部の田舎町イースタ──北欧が舞台であるという寒々しさは伝わってくるが、暗さを感じさせない雰囲気はどこまで読んでも心地がいい。片田舎で起きる事件だからこそ、作中に与えるインパクトは大きく、それと反比例して浮き彫りになるイースタの町並みや時間の流れ、そこで暮らす人々の生活感をイメージするごとに、不思議とこのストーリーに引きずり込まれてしまうのだ。

主人公のヴァランダーも、冴えない中年男で、やり手の刑事というタイプではない。地道に手掛かりを追い、その先で行き詰まり、自問自答を繰り返して苦悩する。彼を取り巻く捜査員たちも同様で、スペシャリストはひとりもいない。なのに、こうも印象的に映るのは何故だろう。不器用な一途さに等身大の魅力を感じているのかもしれない。読みながら、彼らと一緒に捜査してる気になってしまうのは、作者の技巧のひとつであり、私が最も気に入っている点である。

スウェーデンが抱える社会問題をクローズ・アップさせているが、本作品は「警察小説」であって、「社会派ミステリ」ではない。その領域をキープしつつ、社会問題を読者に認識させる構成もさすがだと思う。シリーズ開幕作として読者を掴むには申し分のない秀作。

評価
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Comment

Cozy
at 2008/01/19/ 16:45 | URL | EDIT
『目くらましの道』で初めて知った作家だったので、『殺人者の顔』はあまり期待しなかったのに、面白かった。

ヴァランダーがすさんでたのがとても印象に残ったけど、殺人事件を発端とした他の事件への物語の発展や複数の事件を同時に扱うテクニックなどはとても読み応えがありました。

ただ評価が低いのは結末へのもっていき方なのかなぁ。好き嫌いが分かれそうな終わらせ方だと思いました。
がる@管理人
at 2008/01/19/ 21:14 | URL | EDIT
一作目から順に読んでも満足できるシリーズだと思います。
ただ『目くらまし』を最初に読んでしまったので、
その実力に見合ったハードルの高さが自動的に設定されちゃったような…。

アンチ・ヒーロー的なヴァランダーのキャラや、「おや?」と思えるラストへの展開は、
警察ミステリだからこそ成立するのかな?と思うようにしてますよ〜
Cozy
at 2008/01/19/ 21:44 | URL | EDIT
ですね。ヴァランダー物はある一定の質は確保される書き方のような気がします。古本屋さんで見つけたら続きを読むぞ〜♪

半年後に事件を解決する必然性があまり感じなかったのは事実でした。どーですか?
がる@管理人
at 2008/01/20/ 21:06 | URL | EDIT
この手のミステリのラストって、作家が納得すればそれでいいじゃん♪って気がするんですよね。
解決部分はストーリーを構成するファクターのひとつに過ぎないのであって、
その良し悪しはあまり重要視しなくてもおっけーかな、と。
謎解きが目的じゃないので、そこに至るまでのプロセスを私は楽しみたいですね〜

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