『三幕の殺意』/中町 信

04 12, 2008
4488025269三幕の殺意
中町 信
東京創元社 2008-01
評価

昭和40年の厳しい雪の訪れを間近にひかえた12月初旬のこと。尾瀬沼の湖畔にある朝日小屋、その離れで、そこに住む日田原聖太が、その年初めての雪の降り積もる夜、何者かの手で殺された。朝日小屋にはその晩、被害者に恨みを持つ男女が何人か泊まっていた。誰もが犯行は可能と思われて、しかし犯人絞り込みの決め手はない。容疑者のひとりに数えられると同時に神奈川県警のベテラン刑事、津村武彦によるアリバイ崩しが始まる。
古きよき時代の本格ミステリといった感じ。典型的な設定が逆に新鮮で一気に読めてしまった。どこに伏線が張られているかわからない展開と、何かを隠そうとする容疑者たちとの相乗効果は抜群で、吸引力としては申し分ない。そうこうするうちに本文は終了し、エピローグに移ってしまう。この展開に呆然となるのだが、それ以上に、「読者への挑戦」が挿入されていることに驚かされた。後日談とされるエピローグで果たして「解決編」が成立するのか、想像できなかったからだ。この不安は杞憂に終わり、スムーズな運びで真犯人の名が明かされる。トリックには納得したが、この長編を支えるには若干弱い気がしないでもない。作者曰く、「そのまま終わっては芸がない」ということで加えられたラスト三行は、サプライズというよりは感心させられた。シンプルではあるが、なかなか巧妙な三行である。
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