『完全恋愛』/牧 薩次

05 20, 2008
4838717679完全恋愛
牧 薩次
マガジンハウス 2008-01-31
自己評価
  • 第三位『このミステリーがすごい!』(2009)
  • 第三位『本格ミステリ・ベスト10』(2009)
  • 第六位『週刊文春ミステリーベスト10』(2008)

他者にその存在さえ知られない罪を完全犯罪と呼ぶ。では、他者にその存在さえ知られない恋は、完全恋愛と呼ばれるべきか…。舞台は第二次大戦の末期、昭和20年。福島の温泉地で幕が開く。主人公は東京から疎開してきた中学二年の少年・本庄究。この村で第一の殺人が起こる。凶器が消えるという不可能犯罪。そして第二章は、昭和43年。福島の山村にあるはずのナイフが時空を超えて沖縄・西表島にいる女性の胸に突き刺さる、という大トリックが現実となる。そして第三章。ここでは東京にいるはずの犯人が同時に福島にも出現する、という究極のアリバイ工作。平成19年、最後に名探偵が登場する。全ての謎を結ぶのは究が生涯愛し続けた「小仏朋音」という女性だった。
恋愛小説をベースとした主人公の一代記として描かれているが、着地点はまさしくミステリ。その潔さが爽快である。戦後から始まり、高度成長期を経て平成へとつながっていく流れに沿って、ボリューム満点のストーリーが展開されるので、読了後はページ数以上の余韻に浸ってしまった。つくづくお得な一冊だと思う。「凶器」「密室」「アリバイ」という本格を形成する三大ファクターも、確かな吸引力で惹きつけられるため、読み応えは抜群。拡げた風呂敷の規模を作者がきっちりと把握しているので、ラストへの流れは至極自然で無理がない。大技・小技を効かせた伏線の収拾にも納得し、どこか余裕すら感じる作者のテクニックに感心しきり。『完全恋愛』と名付けたテーマに対して、読者がどのようなスタンスで挑むかがポイントだろう。ちなみに、本作品の作者はさる大御所である。
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