『造花の蜜』/連城三紀彦

12 17, 2008
4758411247造花の蜜
連城 三紀彦
角川春樹事務所 2008-11
評価
  • 第一位『ミステリが読みたい!』(2010)

造花の蜜はどんな妖しい香りを放つのだろうか…。その二月末日に発生した誘拐事件で、香奈子が一番大きな恐怖に駆られたのは、それより数十分前、八王子に向かう車の中で事件を察知した瞬間でもなければ、二時間後犯人からの最初の連絡を家の電話で受けとった時でもなく、幼稚園の玄関前で担任の高橋がこう言いだした瞬間だった。「だって、私、お母さんに…あなたにちゃんと圭太クン渡したじゃないですか」。それは、この誘拐事件のほんの序幕にすぎなかった―。
“サプライズ・マスター”による前代未聞の誘拐ミステリ。幾重にも重なったプロットは全く先が見えず、ラストで浮かび上がる事件の構図は綿密で秀逸。

テクニックも表現もトップクラスで余裕すら感じるが、オチだけが微妙。評価が分かれるのは必至だろう。残念だったのは、アクロバティックなオチへと向かう窮屈な流れのせいか、いつもの絶妙なバランスに狂いが生じていること。最終章は本当に必要だったのか? 

しかし、このオチを活かす展開としては、考えられる最高のストーリーだろう。繊細で壊れやすい骨組みを、これだけ見事に肉付け出来る作家はそうそういない。誘拐ミステリの概念を覆すほどの強烈なインパクトを奥に秘めた連城ミステリの傑作。
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