『天啓の殺意』/中町 信

12 30, 2009
4488449026天啓の殺意
中町 信
東京創元社 2005-04-25
自己評価:秀作

柳生照彦から持ち込まれた犯人当てリレー小説。柳生の問題編に対し、タレント作家の尾道由起子に解決編を書いてもらい、その後に自分の解決編を載せる。要するに作家同士の知恵比べをしようという企画は順調に進行するかに見えたが…。問題編を渡したまま、柳生は逗留先から姿を消し、しかもその小説は半年前の実在事件を赤裸々に綴ったものだった。
非常に手強い叙述ミステリ。例によって本作品も二度楽しめる作りとなっているが、一度目だけでも十分面白い。フーダニットものとしての完成度は高く、この段階ですでに二段落ちを用意してあるという手の込みよう。

起承転結の転の場面で「おや?」といぶかしんでいると、一気に二重底に叩き落された。そしてお決まりの、ページを繰って問題箇所を確認する敗北者のマヌケな行為。この行為は久方ぶりだったので、非常に爽快だった。

某名作の変形バージョンとでも言うのだろうか、作中作なしでは完成し得ない素晴らしい構成である。プロット作りに時間をかける作者らしい計算されつくした騙しの仕掛け。しかしこの仕掛けは危ういバランスの上に成り立っていることも事実で、慣れた読者ならば、犯人像から逆算してショートカットで真相に辿り着くかもしれない。そこまでして作者を出し抜いたところで、微妙な後味の悪さが残るだけだろうと思うのは私の穿った見方かな? 

気を楽に、そして先入観なしで読むと、万華鏡のように変化する“真相”の連鎖にめまいと快感を覚えるはず。やはり本格には“キレ”と“意外性”がないとつまらない。
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