『ラスト・チャイルド』/ジョン・ハート

04 25, 2010
4150018367ラスト・チャイルド
ジョン・ハート
早川書房 2010-04-09
自己評価:普通
  • 第一位『ミステリが読みたい!』(2011)
  • 第一位『週刊文春ミステリーベスト10』(2010)
  • 第五位『このミステリーがすごい!』(2011)

十三歳の少年ジョニーは、犯罪歴のある近隣の住人たちを日々監視していた。彼は、一年前に誘拐された双子の妹アリッサの行方を探しているのだ。美しい少女だった妹は何者かに連れ去られたが、警察はいまだ何の手がかりも発見できずにいた。ジョニーの父親も、娘が誘拐されてまもなく謎の失踪を遂げていた。母親は薬物に溺れるようになり、少年の家族は完全に崩壊していた。ジョニーは学校を頻繁にさぼり、昼夜を問わない危険な調査にのめり込んだ。ただひたすら、妹の無事と家族の再生を願って──英国推理作家協会賞最優秀スリラー賞受賞作。
あらすじを読んでイヤな予感はしていたがやはりその通りだった。暗い。物語全体が暗すぎる。どこかに明るい材料はないものかと期待する序盤だったが、細部にわたって暗いことを認識しただけだった。

個々の問題と向き合うことを拒否している頑なな登場人物たち。家庭という居場所は崩壊し、救われない世界にどっぷり浸かっている。この陰惨な背景が底なし沼のごとく拡がり、その上に悲劇的な事件が乗っかっている。

意外な方向から動き出す事件に、救われない世界も徐々に変化する。いい兆候と悪い兆候。問題と対峙することを余儀なくされた者たちは混乱し焦燥する。この辺りの細やかな描写にジョン・ハートらしさがよく出ている。家族間の微妙な距離、すがりたいけどすがれないジレンマと葛藤に、幾度となく悲哀を感じた。

事件の落ち着く先は途中から予想できる。プロセスに若干のご都合主義はあるものの、ミステリ小説としての基本ルールはクリアしているだろう。

事件を通して失ったものもあるが、手に入れたものの意味は大きい。そこにはそれぞれの“成長”が不可欠だからだ。悲劇的であるのに、なぜか読後感は悪くはない。フィニッシング・ストレートがやばかったかな。前作には及ばないが、海外ミステリファンを唸らせるだけの良作には間違いない。
2 Comments
Cozy12.05.2010 URL [edit] 

ハヤカワ文庫版で読み終えました。
『川は静かに流れ』より読みやすかったです。

全体的に13歳の少年が活躍しすぎたなという甘さが気になりましたが、ミステリとしては良くできてると感じました。

がる@管理人12.05.2010 URL [edit] 

今のところ、早川ミス、文春ミスと二冠ですね。
『川~』の方が好みなので、この結果はちょっと複雑です。

少年少女が主人公のお話って苦手。
ジョニーの危なっかしい一途さに疲労を感じてしんどかったです。
次回は大人を希望します。

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Karma12.05.2010

「説明がつかないと言ってるんです」 『ラスト・チャイルド(下)』(ジョン・ハート) pp.327 少年ジョニーの人生はある事件を境に一変した。優しい両親と瓜二つのふたごの妹アリッサと平穏に暮らす幸...

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