『タワーリング』/福田 和代

05 04, 2011
4103294612タワーリング
福田 和代
新潮社 2011-04
自己評価:秀作

地上50階地下5階、まるで一つの街のような巨大ビル。朝9時、警報ベルが鳴り響く。「我々は、ウインドシア六本木をジャックした」人質は最上階に住むビル会社社長。駆けつけた警察はシステムに阻まれ、容易に突入することができない。じりじりと過ぎる時間の中、17階のオフィスに閉じ込められたビル会社の社員、船津康介は、ある奇策を試みる。非常用井戸、備蓄食、発電所を備えた都市の要塞。そのセキュリティと防災システムが、人々を外界から遮断していく。
読む前は単純に『ダイ・ハード』のようなストーリーだと思っていた。そしてさくさく展開し始めると、クライムサスペンスではなく、人情劇がメインなんだと気づかされる。

ビル内に閉じ込められた人間があまりにも多く、それを犯人グループだけでコントロールしてるというやや無理な設定に対して違和感が拭えなかったが、ハイテクタワーが立ち並ぶ現代と照らし合わせると全くのフィクションにも思えない。

ビルを乗っ取る側と守る側、作中で両者の攻防戦が描かれるが、期待するほどの緊張感はない。そこに加わることになった人間の想いがビルジャックの合間に挟まれるが、これも軽めであっさりしている。ただ何となく脳裏に残るので、人間ドラマの割合が意識下で増えていく。

高度なシステムや設備を巧く絡めたストーリーは面白く、スピード感にもばらつきがないので一気に読める。ラストの展開もいいと思う。ハラハラドキドキというよりは痛快な感じ。胃もたれ感も虚脱感もなく、いい塩梅でさくっと読了することができる。人間ドラマ部分は少し合わないな、と納得していれば、なかなか相性のいい作家なのだと思う今日この頃。
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