『怪物』/福田 和代

06 14, 2011
4087714101怪物
福田 和代
集英社 2011-06-03
自己評価:普通

定年間近の刑事・香西の心残りは3か月前に時効を迎えた未解決の幼女誘拐殺人事件。すでに主軸から外されている香西は、失踪者・橋爪の足取りを単独で捜査中、訪れた最新鋭のゴミ処理施設で思いがけず“死”の匂いを嗅いでしまう。その部屋の主は、すべてを溶かす亜臨界水の若き研究者・真崎。彼の過去を知ったとき、香西は…。
スケールの大きい派手なテーマが多い福田作品とはがらりと違った雰囲気。特殊な能力を持ったことによる主人公の孤独と精神的閉塞感を、地味だが念入りに描いてある。

主人公の“変化”が起点となってくるが、思考の根拠があまりにも唐突なので違和感がある。彼の心理にシンクロしていくストーリーも、かなり無理な展開を冷静に進めていくので、さくさく読める割にはどこか拒絶してしまう感じ。 主人公の正義感のくどさと、敵役が悪人になりきれていないのが、作品全体をより小ぶりに見せているように思えてならない。

そしてこのタイトル。ここが一番残念なところかも。インパクトあるタイトルはそれだけでハードルを高くする。「怪物」というワードに対するイメージに、作中の「怪物」が追いついてこないのだ。もっと弾けてほしかった。一歩踏み込んでほしかった。垢抜けてほしかった。

主人公の能力は興味深い。だが変化球ではなく、ストレートで攻めても十分面白かったのでは? キャラクターに執着しない方がこの作者の良さが引き立つと思う。
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