『シャンタラム』/グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ
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| シャンタラム〈上〉 シャンタラム〈中〉 シャンタラム〈下〉 | グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ 新潮社 2011-10-28 自己評価: ![]() |
男は武装強盗で20年の懲役刑に服していた。だが白昼に脱獄し、オーストラリアからインドのボンベイへと逃亡。スラムに潜伏し、無資格で住民の診療に当たる。やがて“リン・シャンタラム”と名づけられた彼のまえに現れるのは奴隷市場、臓器銀行、血の組織“サプナ”。数奇な体験をもとに綴り、全世界のバックパッカーとハリウッド・セレブを虜にした大著。
インドという国の善し悪しを評価するのではなく、見たままを読み手に伝えようとする作者の粘りの筆致が印象的。ひとつの着眼点に対して複数の表現方法を積み重ね、物事の残酷さを、人の心の複雑さを読者に植え付けていくパターンにハマり、一気に奥へと引き込まれた。
登場人物は、国籍・人種を問わずとにかく多い。造形はわかりやすく、好き嫌いに関わらずそれぞれ魅力的。また、カーデル・ハーンの“哲学”やカーラの“分析眼”など、目の覚めるような的確な描写で綴っていくシーンも読みドコロのひとつ。
ただ、自伝的小説でなければ途中で退屈していただろう。小説としての起承転結が弱く、ボンベイで体験したエピソードの重ねづけに食傷することもしばしば。これが実際に起こったことなんだと思えば、オチのないエピソードも興味深く読めるというもの。
上巻は“滞在記”、中間は“逃亡記”、そして下巻になって“小説”としての面白さを実感できたような気がする。 長い物語を通して浮かび上がってきたのは、宿命、絆──そして、前へ進むには信じること。シンプルで力強いメッセージが心に響く秀作。





