『解錠師』/スティーヴ・ハミルトン
![]() | 解錠師 スティーヴ・ハミルトン 早川書房 2011-12-08 自己評価: ![]() |
8歳の時に言葉を失ったマイク。だが彼には才能があった。絵を描くことと、どんな錠も開けられる才能だ。やがて高校生となったマイクは、ひょんなことからプロの金庫破りの弟子となり芸術的な腕前を持つ解錠師になる。プロ犯罪者として非情な世界を生きる少年の光と影を描き、世界を感動させた傑作。エドガー賞最優秀長篇賞/スティール・ダガー賞受賞。
言葉を失った主人公の一人称が読み手に与える印象は大きい。そこを最大限利用して、読者の共感を誘う作者の手腕が巧い。話せないハンデなどどこ吹く風、作中のストーリーは多くの動きや会話に支えられ、少年の語りと併せて、静と動の対比が作品にメリハリを与えている。
解錠師としてのテクニックや緊張感を描くシーンも面白いが、もうひとつのストーリーである少年と少女の恋物語に惹きつけられた。言葉の代わりに得意の絵で会話するシーンは素晴らしく、少年のトラウマの真相と共に、このふたりの行く末の吸引力は半端ない。
ラストのやりとりはやられた。脳裏に焼きつくイラストと、少年の決意が余韻となって長く残る。施錠されているのは金庫だけではない。頑なな少年の心もロックされたまま。ダブル・ミーニングなタイトルの意味と、地味に計算された構成の妙に感服する秀作。



