『解錠師』/スティーヴ・ハミルトン 

01 20, 2012
4150018545解錠師
スティーヴ・ハミルトン
早川書房 2011-12-08
自己評価:秀作

8歳の時に言葉を失ったマイク。だが彼には才能があった。絵を描くことと、どんな錠も開けられる才能だ。やがて高校生となったマイクは、ひょんなことからプロの金庫破りの弟子となり芸術的な腕前を持つ解錠師になる。プロ犯罪者として非情な世界を生きる少年の光と影を描き、世界を感動させた傑作。エドガー賞最優秀長篇賞/スティール・ダガー賞受賞。
面白かった。ストーリーテリングに秀でているというわけでもないのだが、気がつくと読み終えていたという感じ。口のきけない少年、トラウマ、錠、犯罪者集団、恋──ありがちな要素が完璧な割合でブレンドされているので、ただのよくあるミステリでは決してない。

言葉を失った主人公の一人称が読み手に与える印象は大きい。そこを最大限利用して、読者の共感を誘う作者の手腕が巧い。話せないハンデなどどこ吹く風、作中のストーリーは多くの動きや会話に支えられ、少年の語りと併せて、静と動の対比が作品にメリハリを与えている。

解錠師としてのテクニックや緊張感を描くシーンも面白いが、もうひとつのストーリーである少年と少女の恋物語に惹きつけられた。言葉の代わりに得意の絵で会話するシーンは素晴らしく、少年のトラウマの真相と共に、このふたりの行く末の吸引力は半端ない。

ラストのやりとりはやられた。脳裏に焼きつくイラストと、少年の決意が余韻となって長く残る。施錠されているのは金庫だけではない。頑なな少年の心もロックされたまま。ダブル・ミーニングなタイトルの意味と、地味に計算された構成の妙に感服する秀作。
4 Comments
  仁01.30.2012 URL [edit] 

 素直に面白く読めて久しぶりにポケミス
良かった。軽いタッチに対比しながら行き来
する描写が上手く読むのが楽しいですよね、
今回のハヤカワ、ポケミスもSFも面白いですよ。

がる@管理人01.31.2012 URL [edit] 

わかりやすくて面白かったです。
先の展開が読めないのも、惹きつけられた要素のひとつですね。
次のポケミスは『アイアン・ハウス』かな?

Cozy03.26.2012 URL [edit] 

面白かったです。
犯罪小説なのかなと思っていましたが、ベースは口を利けない青年の恋愛小説なんですね。
解錠師という仕事や漫画での文通や「口が利けないのは仲間を裏切らないから頼もしいな」など、口が利けないという設定を上手く利用した作品にした秀作でした。

がる@管理人03.26.2012 URL [edit] 

作中の、犯罪パートと恋愛パートのバランスがよかったです。

口が利けないから筆記で伝えるという図式が、
この作品ではすごく効果的に使ってありましたね。
いやー、そう考えるとつくづくデキたお話だわ。

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Karma03.25.2012

「金庫にふれるときは、それを女だと思え。ぜったいにそれを忘れるな。わかったか」 僕はうなずいた。 「世界一の難問であり、男が直面する最大の難題は、女心の謎を解くことだ」 『解錠師』(スティー...

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