『特捜部Q カルテ番号64』/ユッシ・エーズラ・オールスン

05 30, 2013
特捜部Q ―カルテ番号64
ユッシ・エーズラ・オールスン
早川書房 2013-05-10
自己評価:

特捜部Qが今回挑むのは、80年代に起こったナイトクラブのマダムの失踪事件。アサドとローセの調査によるとほぼ同時に5人もの行方不明者が出ているという。カール・マーク警部補は大事件の匂いを嗅ぎつけ捜査に着手。やがて、壮絶な過去を持つひとりの老女と新進政党の関係者が捜査線上に浮かび上がってくるのだが。人気警察小説シリーズ第四弾。
1987年に起こった失踪事件を、2010年の現在、特捜部Qが捜査する展開。この構成はシリーズ共通だが、今回は1987年パートが濃すぎる。ここで挿入される回想シーンが強烈で、ある女性の半生が作品全体を深い闇で包み込んでいる。彼女の経験したことは同性としてショックを受けた。ローセの台詞以上に汚い言葉で罵りたくなる。さらに、あとがきからこういう施設が実際にあったことを知り驚愕した。なんという社会、なんという時代だろう。

過去事件でこれだけインパクトの強いストーリーを描いてしまうと、特捜部Qの活躍がどうしてもライトに映ってしまう。穿った見方をすれば、完全に別々のストーリーをひとつの作中で展開させてるような。長編二本を支えられるネタなだけに、勿体無い気がしてならない。

そんな充実した中身を堪能していたら、いきなりサプライズでやられた。J・ディーヴァーみたいなこともやるんだ、この人。サプライズの出し方としては間違ってない、むしろ王道。しかしよくよく考えるに、サプライズのための伏線とか結果がストーリーに反映されてなくて、衝撃だけ浮いてしまっている。つくづく勿体無い。

三作読んでみて、被害者の多くが女性と子供というのが気になった。今後もこういう被害者でいくなら精神的にしんどいかも。マークを悩ませるもうひとつの事件はすでに見失いつつあるし、どこかで一区切りつけてくれないかなあ。
4 Comments
06.02.2013 URL [edit] 

 デンマークにこんな施設が有った事に驚きました、でもそのそのおかげか久しぶりのイッキ読み。でも長い。未解決事件って科学捜査の進んでない過去の事件に成ってしまうのでは、となると又こんな感じになるのかな。
 この所の北欧物って過去の犯罪に対するのばかりの印象が多いんだけど。
 

がる@管理人06.05.2013 URL [edit] 

確かに長かったです。

作中で数十年が経過してるシリーズなので、現在に合わせると被害者は若年になるし、
過去に合わせると、本作みたいに関係者は老人ばかりになってしまうという。
科学捜査の影響も含めて、基本的なスタンスは次回作も同じなんでしょうね。

Cozy08.10.2013 URL [edit] 

久しぶりの島根から。

さて、本作をようやく読みましたが、けっこう好きです。
『特捜部Q』って、「コールドケース」+「2つの時間軸」を扱うという縛りがある設定なのに、各作品ごとに変化のある内容にできていて、著者ってアイデアマンだなと思います。
本作も、犯罪小説×コールドケースで、初めてでしたしね。
犯人側の視点が入るので、フーダニット的なドキドキ感はないことが多いですが、今回はそこもカバーされていたと感じました。

両方の時間が最後まで平行線を辿るのと、作品全体のボリュームも多いので、長いと感じるところもありましたが、カールたち特捜部Qチームも全員が活躍していたし、シリーズ好きとしては、問題はないかなぁ。

問題点は、みんな老人過ぎて、正義の鉄槌とはならないところかな。

社会派の要素というか、実在の施設を題材にこの話に仕上げるのは巧いと思いました!

がる@管理人08.11.2013 URL [edit] 

シリーズの特徴でもある縛りを、作者自身が味わって描いてるような印象を受けました。

カールとアサドのやり取りから、ドタバタ喜劇のイメージがどうしても拭えないのですが、今回は社会的要素が強く、骨太な話に仕上がってましたね。

老人ばかりという点は確かに気にはなりますね。
そんな大昔の事件をほじくり返さなくてもいいじゃない、って思ってしまった。

Leave a comment
管理者にだけ表示を許可する
OK?
1 Trackbacks
Karmaなミステリ読書ブログ08.13.2013

『特捜部Q カルテ番号64』() pp.227 「特捜部Q」―過去の未解決事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の新部署である。「Q」が今回挑むのは、八〇年代に起こったナイトクラブの...

Top
CATEGORY
TAG CLOUD
COMMENTS
TRACKBACKS
TRACKBACK PEOPLE
LINKS