『楽園の蝶』/柳 広司

07 10, 2013
楽園の蝶
柳 広司
講談社 2013-06-21
自己評価:

脚本家志望の若者・朝比奈英一は、制約だらけの日本から海を渡り、満州映画協会の扉を叩く。だが提出するメロドラマはすべて、ドイツ帰りの若き女性監督・桐谷サカエからボツにされる。彼女の指示で現地スタッフの陳雲と二人で、探偵映画の脚本を練り始めるが…。
舞台は戦争直前の幻影都市・満州。映画製作という華やかな世界の裏では、混沌と無秩序が増殖を繰り返している。時代的背景や社会的要素などを織り込んで構成されているが、さらりとなぞっただけという印象が拭えず、最後まで浅く軽い物語にしか見えなかった。

勘が鋭いという設定の主人公だが、作中での言動が馬鹿すぎる。にも関わらず、脇役の協力や安易な情報獲得によって謎を解明していく。この辺りの違和感はもはやコメディ。それに対して、影の主人公とも言うべき甘粕正彦のパートは重苦しく、硬派な印象を与える。実際の事件をベースに甘粕の苦悩を描いてはいるが、小さな謎が作中に浮遊している状態では、彼の苦しみを慮ることも逆に難しいというもの。

『ジョーカー・ゲーム』の雰囲気を期待して、勝手にハードルを上げたのが失敗だった。面白くないわけではないが、どことなく中途半端な虚脱感は残ってしまう。余計な先入観が悪影響を及ぼすという格好の例だった。
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