『緑衣の女』/アーナルデュル・インドリダソン

08 04, 2013
緑衣の女
アーナルデュル・インドリダソン
東京創元社 2013-07-11
自己評価:

住宅建設地で発見された、人間の肋骨の一部。どう見ても最近埋められたものではない。現場近くにはかつてサマーハウスがあり、付近にはイギリス軍やアメリカ軍のバラックもあったらしい。住民の証言の端々に現れる緑の服の女。数十年のあいだ封印されていた哀しい事件が、捜査官エーレンデュルの手で明らかになる。
  • 第二位『ミステリが読みたい!』(2014)
  • 第二位『週刊文春ミステリーベスト10』(2013)
  • 第十位『このミステリーがすごい!』(2014)
三つのパートから構成されている。人骨捜査とエーレンデュルの娘の災難は現在のお話。その合間に挟まれる、十数年前のとある家族のストーリーが、本作品の屋台骨をがっちりと支えている。人骨捜査もエーレンデュル・ファミリーの話も気にはなるが、とにもかくにも、この家族の歴史が凄まじく陰惨で、序盤は怒りを通り越して吐き気を催すほどだった。

“暴力”という表現は、それを経験したことのない人たちが使う言い回しだ──という台詞に思わず背筋が寒くなった。肉体的、精神的に破壊される様が淡々と繰り返し描かれている。目を背けたくなる心情に反比例するかの如く、なぜかページを繰る手は止まらず、気付けば一気に読み終えていた。強さと弱さ、惨さと慈悲、そして冷酷と優しさ、真逆の印象が秒刻みで、しかもそれぞれMAXで襲ってくるので、精神的にかなり翻弄されるが、読後感は悪くない。余韻は尾を引くが、一定のラインで折り合いをつけることで、沈静化するはず。

ミステリ度は低めたが、鋭角に食い込んでくる辺りに、シリーズとしての確実な成熟を実感した。やっぱり柳沢さんの訳だと安心するのかしら。
4 Comments
Cozy09.08.2013 URL [edit] 

ミステリとしては、謎解きも、警察の手腕も、面白い!って褒められる内容ではありませんが、小説として読ませる作品だったと思います。

"暴力"については、1940年前後の家庭内暴力の部分も凄いですが、主人公の家族関係も凄いかなと思います。
ノワールを除くと、今までに読んだ小説としては、一番凄い家族関係だと思います。

がる@管理人09.08.2013 URL [edit] 

前作もそうですが、家族をテーマにかなーりヘヴィーなネタで勝負してますよね。

ミステリの縛りもクリアしつつ、小説としても完成度が高いのは作者の手腕かなと素直に感じました。

今後、エーレンデュル・ファミリーってどうなるんだろ…。

09.15.2013 URL [edit] 

前半100pまで一気に、確かにミステリー度は低いけど上手く納めて、娘との修復は次回のお楽しみか。

がる@管理人09.19.2013 URL [edit] 

全体のバランスが良かったように思います。
ストーリーに引き込む手腕も巧いですよね。

エーレンデュル・ファミリーのトラブルはシリーズを通して語られていくのかな。

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Karmaなミステリ読書ブログ09.08.2013

「それと比較すると、この人骨が埋められた時期などほんの一瞬前のことにすぎない」 『緑衣の女』(アーナルデュル・インドリダソン) pp.31 住宅建設地で発見された、人間の肋骨

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