『ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密』/トマス・H・クック

03 15, 2014
ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密
トマス・H・クック
早川書房 2014-02-07
自己評価:

犯罪・虐殺を取材し、その本質を抉る作品を発表したジュリアンは、死の直前もロシアの殺人犯に関する資料調査に没頭していたという。執筆意欲のあった彼がなぜ死を選んだのか?親友の文芸評論家フィリップは、やがて友の周囲でかつて一人の女性が行方不明になっていたことを知る。フィリップはジュリアンの妹とともに手掛かりを追うが…。
本書は、素顔を隠す者、正体を偽る者たちが暗躍するスリラー仕立ての作品で、ある人物が自ら命を絶つ場面で始まり、そして締めくくられる。亡き親友と同じ場所に立ち、彼が見聞きしたままを体験したいと望んだ主人公が、ジュリアンの著書の舞台となった土地を刊行順に訪れるという趣向。──訳者あとがきから抜粋。

共有した時間を元に、作家の人物像を懐かしく語っているが、旅が進めば進むほど作家の意外性がクローズアップされ、友情に対する価値観が徐々に揺らいでくる。この辺りの微妙な心理の変化は、ミステリというよりは、純文学のヴェールをまとった雰囲気がある。

ささいなきっかけから人生が流されていく皮肉さを描く手腕はクックの真骨頂だが、本作品は、追想の旅がいつしか探偵劇に変貌していく展開が秀逸で、ゆるやかに進行しつつもプロットは緻密。読後、振り返ればミステリだと認識できるが、読書中はそういう意識は薄いので、退屈さを感じる時間の方が多かったかな。

「子供は戯れに蛙を殺すが、蛙は真剣に死ぬ」、「善とは悪の極めて巧妙な変装である」──この印象的なふたつのフレーズが真相なのよね。
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