『王とサーカス』/米澤 穂信

12 16, 2015
王とサーカス
米澤 穂信
東京創元社 2015-07-29
自己評価:

2001年、太刀洗万智は知人の雑誌編集者から仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼みんだ矢先、王宮で王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり……。「この男は、わたしのために殺されたのか?」─疑問と苦悩の果てに、太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは?
  • 第一位『ミステリが読みたい!』(2016)
  • 第一位『週刊文春ミステリーベスト10』(2015)
  • 第一位『このミステリーがすごい!』(2016)
  • 第三位『本格ミステリ・ベスト10』(2016)
本年度のミステリ・ランキングを総なめ状態だったので、慌てて読んでみた。刊行時はタイトルの“サーカス”というワードが引っ掛かってイマイチ食指が動かなかった。

王宮での事件後、主人公はとある准尉に面談する機会に恵まれる。緊迫した雰囲気の中で准尉は言う─「お前はサーカスの座長だ。お前の書く記事はサーカスの演し者だ」─実際に起こった事件を基に、ジャーナリズムの本質を問うテーマに沿ってストーリーは展開する。若い主人公は准尉の問いに答えを見出せないまま、自分を見失いそうになる。社会派に傾くのかと思いきや、ひとつの死体の登場でギアが入れ替わり、本格ミステリとして一気に加速する。この辺りの繋ぎ方が巧いなあと感心した。

自信を回復した主人公は死体の謎に迫っていく。ここから先は作者お得意の見せ場が続く。視点を変え、論理的に考察し、新たな事実を突き止める。ここまではよかったのだが、真相があまりにもお粗末だったので急速に萎えてしまった。よくあるオチで安っぽい。

でも終盤で盛り返す。謎解きの真相を受けて報道のスタンスに帰結するラストは、物悲しいけど印象的でもあって私は好きです。全体のバランスはいいのだわ。本格へのこだわりも読んでて楽しいし。だから結局リピートしちゃうのかな。
2 Comments
Cozy12.31.2015 URL [edit] 

主人公の関係者がほとんどいないのに、その中で、無理に事件を解決しようとすると、どうしても安っぽくなりますよね。

部分的には上手な作品なんだと思うけれど、ミステリとしてのインパクトはなかったです。

がる@管理人12.31.2015 URL [edit] 

警察官と行動を共にしたりとか、謎解きモードに入ってからはちょいちょい都合のいい展開になってる違和感はありました。

確かに、無理に進めると安っぽくなりますよねー。
キャラクターも個性的だったたけに、よくあるオチには「ブルータス、お前もか!」ってツッコミたくなりましたよ(笑

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1 Trackbacks
Karmaなミステリ読書ブログ12.31.2015

「なるほど、いい答えだと思います。ですが、多様であることがそのまま良いとは言えない」 「……はい」 「私の考えは似ていますが違います。我々は完成を求めている。詩であれ絵であれ、教えであれ、人類の叡智を結集させた完成品を作り上げるために、それぞれが工夫し続け、智恵を絞り続けているのではないかと思うのです」 『王とサーカス』(米澤穂信) pp.211 2001年、新聞社を辞め...

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