『転落の街』/マイクル・コナリー

11 21, 2016
転落の街(上)
転落の街(下)
マイクル・コナリー
講談社 2016-09-15
自己評価:

絞殺体に残った血痕。DNA再調査で浮上した容疑者は当時8歳の少年だった。ロス市警未解決事件班のボッシュは有名ホテルでの要人転落事件と並行して捜査を進めていくが、事態は思った以上にタフな展開を見せる。2つの難事件の深まる謎と闇。許されざる者をとことん追い詰めていく緊迫のハードボイルド。
  • 第七位『週刊文春ミステリーベスト10』(2016)
  • 第七位『このミステリーがすごい!』(2017)
ボッシュ・シリーズでは『ナイン・ドラゴンズ』に続く作品。香港を舞台にしたエンタメ重視の前作とは違い、丁寧に捜査過程を追っていく本来の警察小説に回帰したとも言える内容。

原題の『TheDrop』には複数の意味が込められている。ボッシュが捜査するふたつの事件──ホテルからの転落(drop)事件と、血痕(drop)からDNAが採取された未解決事件。そして刑事としてのキャリアを左右する定年延長制度(drop)のことでもある。宿敵が事件に絡み、ボッシュは否応なくハイ・ジンゴ(政治的意味合いのある事件)に巻き込まれていく。その中で、捜査手続きをキープし、落とし穴に嵌らぬよう行動するボッシュの決断が本作品の大きな見所。この辺りの円熟度はベテラン刑事としてのキャラクターの成せる業であって、謎解き要素は薄いけれども、それを補って余りあるボッシュの静かなる熱情は吸引力抜群だった。

ふたつの事件はバランスもよく、それぞれがボッシュに教訓を与えるような形で収束する。ひとつは劇的な展開を見せるので、途中で感極まってしまった。ハイ・ジンゴに翻弄され、使命感に燃えて立ち上がるも、結局は苦悩するボッシュに戻るのだなと実感。でもこの実感こそがシリーズ・ファンとしての証だったりするのよね。

そんなボッシュも還暦(!)。前作では父親としてのボッシュに違和感ありだったが、今回はわりとすんなり受け入れられた。警察官を志す娘の師となる時もあれば、弱さを見せる場面もある。長年の友人関係は変化を見せ始め、定年の時期が設定される。刑事としてのキャリアの終焉に向けて、徐々に動き出したように見えなくもないけど、ブレないボッシュを再確認できて大満足の読書時間だった。初期作品と比肩するシリーズでも屈指の作品。
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