『熊と踊れ』/アンデシュ・ルースルンド ステファン・トゥンベリ

01 07, 2017
熊と踊れ(上)
熊と踊れ(下)
アンデシュ・ルースルンド
ステファン・トゥンベリ
早川書房 2016-09-08
自己評価:

崩壊した家庭で育ったレオら三人兄弟は、大量の銃器を入手し銀行強盗を計画をする。大胆な犯行で警察を翻弄し、次々と銀行を襲撃していく彼らの暴力性は、少年時代に父から学んだものだった。かつて彼らに何がおこったのか。実際の事件をモデルにした最高熱度の北欧ミステリ。
  • 第一位『ミステリが読みたい!』(2017)
  • 第一位『このミステリーがすごい!』(2017)
  • 第二位『週刊文春ミステリーベスト10』(2016)
大作揃いだった2016年度ランキングのトップを独占した話題作。タイトルは、父が教える大きな敵にヒットアンドアウェーを重ねるけんか技からのもの。90年代初頭にスウェーデンで実際に起こった銀行強盗をベースにしているが、フィクションではなく、「現実をバラバラにしてパズルのように繋ぎ合わせた(作者)」小説。フィクションかと見紛って読まないように。

上巻は銀行強盗を繰り返す兄弟たちと、それを執拗に追う刑事の鬼ごっこ。テンポのよいストーリー運びで進んでいくが、些細な描写にリアルさが垣間見えて徐々に緊張感が高まっていく。正直、上巻読了時はランキング総ナメの実感はなかった。

現在と過去を交互に語る構成は下巻になってから効いてくる。圧倒的な暴力で家族の結束を説く父親と、彼に反発していたはずの長男がタブって見える展開に唖然とする。兄弟は団結し、常に冷静な対処で切り抜けてきたが、結局は暴力から逃れられないということか。彼らの進む方向性に綻びが見え始めたところからの疾走感は読み応え抜群。後半、弟が兄の本質を言い放つシーンは、ぐさりときた。と同時に、実は巧みに構成されたストーリーなのだと気付かされる。追う側の刑事もまた暴力という過去に苛まされているという、徹底的に「犯罪」を描いて見せたその筆力には感服する。

残念に感じたのは、映像を意識した描写が多かったことかな。そのせいであまり重く感じなかったのは良かったのかそうでないのか微妙だけど、もう少しどっしりした雰囲気でも良かったと思う。評価は星四つだが、ランキング発表前に読んでいたら違っていただろうし、ランキング結果の先入観なしに読みたい作品でした。
2 Comments
Cozy05.19.2017 URL [edit] 

今さらながら、2016年のランキング上位作を読んでいますが、何だかんだいって、2016年は豊作なんだなと思い始めました。
『熊と踊れ』、『ザ・カルテル』もなかなか良いし、今、『ミスター・メルセデス』を読んでますが、面白いです。

上下巻ばかりだけど、翻訳ミステリらしくて、よいかな。

がる@管理人05.21.2017 URL [edit] 

そうなんです、なんだかんだ言って豊作だったんですよねー
『熊と踊れ』『ザ・カルテル』『ミスター・メルセデス』はタイプは違うけど、どれも傑作揃い。
ランキング上位も納得です。

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Karmaなミステリ読書ブログ04.30.2017

「氏族は、ほんものの氏族は、絶対に仲間を裏切らない」  やがて父さんが体を起こす。 「ほんものの氏族は、絶対に仲間を裏切らない」  ワインのにおいのする息が、きつめのダンガリーシャツから立ちのぼる汗のにおいと混じり合う。 「ほんものの氏族は、いつでも仲間を守る」  気のせいだと、レオには分かっている。それでも、そう感じずにはいられない。父さんは俺だけに話しかけている、と。 ...

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