『希望荘』/宮部 みゆき

02 26, 2017
希望荘
宮部 みゆき
小学館 2016-06-20
自己評価:

家族と仕事を失った杉村三郎は、私立探偵事務所を開業する。ある日、亡き父が生前に残した殺人の告白の真偽を調査してほしいという依頼が舞い込む。果たして父は人殺しだったのか。35年前の殺人事件の関係者を調べていくと、昨年発生した女性殺害事件を解決するカギが隠されていた。(表題作「希望荘」)。私立探偵・杉村三郎が4つの難事件に挑む。
  • 第四位『週刊文春ミステリーベスト10』(2016)
  • 第九位『このミステリーがすごい!』(2017)
昨秋に図書館に予約を入れたのだが、忘れた頃にやっと読めるようになった。宮部みゆきの人気の高さにまず驚かされる。

私立探偵として新たな人生をスタートさせた杉村三郎が遭遇する四つの事件。開業したばかりなので、手探り状態で調査をする姿が初々しい。探偵としての実績も皆無なので派手な展開にはならず、依頼に真摯に取り組むだけというミステリ的には淡泊な展開。

際立った特徴がない至極フツーな人物である杉村は、時たまストーリーに溶け込んでしまい見えなくなるが、その平凡さが調査の上では大きな武器となり、人々は無害な杉村にぽつぽつと事件の側面を語り出す。

杉村を支える人情味溢れる脇役キャラとは対照的に、四つの事件はどれも決して後味のいいものではない。背負った暗い過去を引きずりながら生きている人たちの苦悩は実にやるせない。どこにでも転がっている現実が、ふとしたボタンの掛け違えで犯罪へと繋がっていくことは誰にでも起こりえることなのだ。でもそんな状況でも救いようがないわけではない。杉村は自らの辛い過去をシンクロさせながら、彼らに希望のきっかけを与えてるのではないだろうか。

普遍的なキャラクターのもつれた感情や心理描写は宮部みゆきの真骨頂。本当に巧いと改めて感心させられた。地味ではあるがいいシリーズだと思う。次作は早めに予約しよう。
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