『湖畔荘』/ケイト・モートン

09 17, 2017
湖畔荘〈上〉
湖畔荘〈下〉
ケイト・モートン
東京創元社 2017-08-31
自己評価:

ロンドン警視庁の女性刑事が問題を起こして謹慎処分となった。ロンドンを離れ祖父の家で過ごすうちに、打ち捨てられた屋敷・湖畔荘を偶然発見し、70年前にそこで赤ん坊が消える事件があったことを知る。興味を抱いた刑事は謎に満ちたこの事件を調べ、赤ん坊の姉であるミステリ作家・アリスに連絡をとる。最後の最後で読者を驚かすのは、偶然か、必然か?
  • 第二位『ミステリが読みたい!』(2018)
  • 第三位『週刊文春ミステリーベスト10』(2017)
  • 第四位『このミステリーがすごい!』(2018)
  • 第五位『本格ミステリ・ベスト10』(2018)

“大人のためのお伽噺”──三作品目のケイト・モートンの評価は、モヤモヤ続きだったこともあってちょい甘め。

1910年代、1930年代、2000年代を行き来し、そえぞれの時代の秘密をあぶり出すという、ジグソーパズル的謎解きの基本を抑えた展開は相変わらず。今回はいつにも増して時代の入れ替わりが目まぐるしいので、特に上巻は迷宮を進んでいるような感覚に陥る。登場人物ひとりひとりの胸に去来する記憶の断片が巧妙にシャッフルされて作中にばらまかれ、そのカードが表を向くたび吸引力も増して行く焦らされまくりの展開はさすがの一言。

親子の問題を幾重にも重ねてストーリーに厚みを持たせているが、本作品で際立つのは謎解きの醍醐味かもしれない。巧妙に張られた伏線と手掛かりの蒔き方は本格のプロセスそのもの。「あまりにも多すぎるパズルのピース。しかも各人がまちまちのピースを握りしめていた」との記述が一言で言い表している。

作者が大事にしているのは「語りの公正」なんだとか。読後に、これは完璧で必然的な結末だと感じさせてくれるバランス感覚。その感覚に寄り添えるよう、深く豊かに織り上げる物語には圧倒される。ラストの驚きは予想可能だが、むしろ「そこまで読者を引っ張っていってくれるのか?」というレールの伸び具合に注目しながら読んでいた。メロドラマ的な感はあるものの、こういう狙い澄ました結末はこの作者だから満足できるんでしょうね。
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Karmaなミステリ読書ブログ01.14.2018

「セオ」アリスが呼びかけた。 『湖畔荘(下)』(ケイト・モートン) pp.290 70年前、コーンウォールの湖畔荘で消えた赤ん坊。見捨てられた屋敷の現在の持ち主は、ロンドンに住む高名な女流ミステリー作家アリス・エダヴェインだった。消えた赤ん坊の姉だ。当時、湖畔荘には三人の娘がいた。そして消えた赤ん坊は待望の男の子だったのだ。女性刑事は何としてもこの迷宮入りした事件の謎を解きたくな...

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