『この世の春』/宮部 みゆき

09 30, 2017
この世の春 上
この世の春 下
宮部 みゆき
新潮社 2017-08-31
自己評価:

時は宝永七年(1710年)江戸時代半ば。下野北見藩二万石に政変が起きる。若き六代藩主・北見若狭守重興が病重篤につき隠居するが、真相は主君押込(家の存続のため、行跡の悪い主君を強制的に監禁すること)であり、原因は重興の心の病だという。目鼻を持たぬ仮面に怯える青年は、恐怖の果てにひとりの少年をつくった。悪が幾重にも憑依した一族の救世主に、この少年はなりうるのか――。
  • 第九位『週刊文春ミステリーベスト10』(2017)
上半期のモヤモヤを吹き飛ばしてくれる傑作だった。一気読みしたい衝動を抑えながらわざと引き伸ばして読書したのはいつ以来だろう。

ホラーの雰囲気をまといながらも、連続した不審事件と並行していくストーリー。作者の時代小説では、この世の理を超えた現象がしばしば描かれるので、合理的に割り切れるのか怪談として決着するのか、読者は最後まで翻弄されることになる。

医学的アプローチによる心の分析がメインとなる後半では、陰惨な過去の因縁が浮かび上がり、一気にサスペンス色が濃くなってくる。論理的思考によって明らかになる凄まじいまでの怨念という展開に圧倒されて、合理主義と非合理世界が混在するお話もアリだなーと納得してしまった。因縁の要因に強引さを感じないでもないが、この着地は確かに割り切れる。

キャラ造形の巧みさについては言うまでもないが、それでもやっぱり素晴らしい。身分や立場は違えども、逆境に抗い懸命に生きる人々の清清しさに感じ入って共感しまくり。そんな中で自然と形成されていくチームによる謎解きは正に本格ミステリで、にやけ笑いが止まらない。

多重人格をテーマに宮部みゆきが時代小説をかくとこうなるのね。おそるべし。
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