『嘘の木』/フランシス・ハーディング

01 27, 2018
嘘の木
フランシス・ハーディング
東京創元社 2017-10-21
自己評価:

高名な博物学者で牧師のサンダース師による世紀の大発見。だがそれが捏造だという噂が流れ、一家は世間の目を逃れるようにヴェイン島へ移住する。だが噂は島にも追いかけてきた。そんななかサンダース師が謎の死を遂げる。自殺ならば大罪だ。密かに博物学者を志す娘のフェイスは、父の死因に疑問を抱く。奇妙な父の手記。嘘を養分に育ち、真実を見せる実をつける不思議な木。フェイスは真相を暴くことができるのか?
主人公は博物学者を夢見る14歳の少女。19世紀半ばのこの時代、女性は生き方を限定され、知識を得ることは無意味とみなされた。体面を取り繕う母の言動と、尊敬する父の支配的な威厳の下で、主人公は抑圧された毎日を送っている。序盤はひたすら耐える読書だったが、父の不審死をきっかけにどんどん面白さが増し、その後は傑作を確信しながらの一気読み。

「嘘の木」の設定以外にSFファンタジー的な要素は一切なく、主人公が覚悟を決めてからは謎解きミステリとして展開していく。木の特異な設定を巧みに謎解きに取込み、観察眼と論理的思考という主人公の得意技を引き立たせた鮮やかな着地は、ミステリ作品としても秀逸。

主人公の14歳という大人でも子どもでもない年齢設定が絶妙。利口な主人公は木を操り呼吸を合わせ、どんどん嘘が上達する。彼女が実感する、“さしだすのは嘘の一部だけでいい。あとは人の想像力がすきまを埋めてくれるのだ”、という想いが、現在の情報拡散社会を風刺しているようにも見えるのは深読みかな。そんな嘘の拡散から垣間見える大人たちの裏の顔を咀嚼するたび、少女は少しずつ成長する。特に、ラストで口にするひとつの嘘に大人への脱皮が見えて心を揺さぶられた。児童文学賞を数々受賞しているらしいが、大人にこそ読んでほしい傑作。宮部みゆきが年間ベストワンに推すのも納得だわ。

評価は四つ星と満点で迷ったが、ここで満点を出しとかないと当分出ない可能性があるので、やや甘めの五つ星。
2 Comments
02.04.2018 URL [edit] 

最後にお母さんの思惑、本音が何ともイギリスチックと言おうか、多分したたかに生きて行けるんだろうなの最後に
ああ親父様残念だね。

がる@管理人02.05.2018 URL [edit] 

生き方を制限されたが故のしたたかさ。
ラストの台詞と共に、もう少し早くお母さまの本音を知りたかったです。
そうすれば彼女に対する見方がかなりゆるーくなっただろうに。

お父様に関しては皮肉としか言いようがない。

Leave a comment
管理者にだけ表示を許可する
OK?
0 Trackbacks
Top
CATEGORY
TAG CLOUD
COMMENTS
TRACKBACKS
TRACKBACK PEOPLE
LINKS