『乗客ナンバー23の消失』/セバスチャン・フィツェック

05 30, 2018
乗客ナンバー23の消失
セバスチャン・フィツェック
文藝春秋 2018-03-28
自己評価:

乗客の失踪が相次ぐ大西洋横断客船“海のスルタン”号。消えた妻子の行方を追うべく乗船した敏腕捜査官の前に現れる謎、謎、謎。錯綜する謎を解かないかぎり、ニューヨーク到着まで逃げ場はない。無数の謎をちりばめて、ドイツ屈指のベストセラー作家が驀進させる閉鎖空間サスペンス。
  • 第三位『このミステリーがすごい!』(2019)
  • 第三位『週刊文春ミステリーベスト10』(2018)
  • 第七位『このミステリーがすごい!』(2019)
「事件落着――そう思ってからが本番です。」
この帯につられて読んでみた久々のフィツェックは、既読作品と比べて意外と読みやすく感じた。タイトルの「23」という数字は、客船一隻につき失踪する人数の平均データだそうな。そう思って読むと、なるほど、クローズドサークルでもある豪華客船は、船底に未使用の通路や船室があったりと、犯罪の要素には事欠かない。

監禁される女性、不穏な計画を練る少女、拷問を目撃する泥棒、「殺し屋がいる」とネタ探しする富豪の老女などなど、のっぴきならない状況下での視点が目まぐるしく入れ替わり、区切りに意味深な一行を残して場面展開する。先が読めそうで読めないので、気が付くとさくさく進んでいた。

事件の背景はなかなかハード。なのにそこまで陰惨さを感じないのは、幸か不幸か「バカミス」という先入観のせいかしら。帯の文言で一気にハードルが上がったせいで、そこまでの驚きはなかったけれど、作者後書きの後にもエピローグが登場するなど、最後の最後まで飽きずに読めるし、ボリュームも満点。

豪華客船でのクルーズって憧れるけど、「23」という数字の意味を考えるとやっぱり遠慮します。海に投げ込めば全部「事故」で片付くもんなあ。コワイ、コワイ。
2 Comments
Cozy09.22.2018 URL [edit] 

フィツェッックって、もっとメタミス感が強かったイメージがありましたが、普通の謎の多いミステリに仕上がっていたと思います。
詰め込みすぎ、やりすぎ、驚かせることを重視しすぎなのかもしれませんが、楽しく読むことが出来ました。

自殺のためのクルージングの利用だったり、豪華客船のブラックな利用方法だったり、虐待だったり、トリッキーな割には社会問題をベースとしていましたね。

がる@管理人09.24.2018 URL [edit] 

そうなんですよ、今までの作品のイメージからするとちょっと違った感じが逆に新鮮で楽しいんですよね。

船上での失踪データについて詳しくまとめてあったので、
警鐘を鳴らす意味合いも強いのかもしれませんね。

Leave a comment
管理者にだけ表示を許可する
OK?
1 Trackbacks
Karmaなミステリ読書ブログ09.22.2018

簡単に死ねる方法について意見交換するフォーラムがいくつもある。そして一番人気は何だと思う? そういとも、クルージングさ。 『乗客ナンバー23の消失』(セバスチャン・フィチツェック) pp.239 事件解決のためなら手段を選ばぬ囮捜査官マルティンのもとに、5年前に豪華客船「海のサルタン号」船上から忽然と姿を消した妻子にまつわる秘密を明かすという連絡が届いた。相手がマルティンを呼...

Top
CATEGORY
TAG CLOUD
COMMENTS
TRACKBACKS
TRACKBACK PEOPLE
LINKS