『カッコーの歌』/フランシス・ハーディング

03 09, 2019
カッコーの歌
フランシス・ハーディング
東京創元社 2019-1-21
自己評価:

「あと七日」笑い声と共に言葉が聞こえる。 わたしは……わたしはトリス。池に落ちて記憶を失ったらしい。母、父、そして妹ペン。ペンはわたしをきらっている、わたしが偽者だと言う。破りとられた日記帳のページ、異常な食欲、恐ろしい記憶。そして耳もとでささやく声。「あと六日」。わたしに何が起きているの? 大評判となった『嘘の木』の著者が放つ、ファンタジーの傑作。
『嘘の木』が傑作だったので、期待しつつあえてハードルを上げて読んでみたら、あっさりと飛び越えてしまった。

『嘘の木』がファンタジー要素を軸にした謎解きミステリであるのに対して、本作品はサスペンスの手法を組み込んだファンタジー色の濃い作品。だが、抑圧された主人公がアイデンティティを獲得すべく、覚悟して世界に飛び込む成長の物語というメインテーマは共通している。

物語の舞台は、第一次世界大戦が終わって間もない1920年のイギリス。事故に遭って記憶があやふやな主人公の思考に寄り添うように、読んでいるこちらも手探り状態で進むことになる。理不尽な境遇に戸惑いながらも、覚悟を決めて立ち上がる主人公の脱出劇からの疾走感がハンパない。思惑だらけの周囲の人間に翻弄されながらも、進まざるを得ない主人公と、彼女に迫るタイムリミットの対比が絶妙で、サスペンスファンタジーとして読ませる技にまんまとハマってしまった。

ダークな色彩のファンタジーだが、姉妹ものとしても読みごたえがある。私自身、姉妹ということもあり、注意深く繊細に描かれた姉妹の物語は幾度となく胸に響いた。読後の余韻で比べれば、『嘘の木』よりもこちらが上回る。がしかし、不慣れなファンタジーの世界観への読解力の自信のなさから満点評価とはいかなかった。

この作者の描く少女たちは素晴らしいと思う。次回作もどんな成長物語に出会えるのかと思うと、今から楽しみで仕方ないなあ。
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