『ノースライト』/横山 秀夫

03 16, 2019
ノースライト
横山 秀夫
新潮社 2019-2-22
自己評価:

一級建築士の青瀬は、信濃追分へ車を走らせていた。望まれて設計した新築の家。施主の一家も、新しい自宅を前に、あんなに喜んでいたのに…。Y邸は無人だった。そこに越してきたはずの家族の姿はなく、電話機以外に家具もない。ただ一つ、浅間山を望むように置かれた「タウトの椅子」を除けば…。このY邸でいったい何が起きたのか?
『64(ロクヨン)』から六年ぶりの長編は、警察ミステリではなく、建築士が主人公のゆるーいハードボイルド。

消えた施主一家を探すというスタートから徐々にストーリーが拡がり始める。手掛かりを追ったその先に、建築家や画家の足跡があり、さらにそんなサイドストーリーにぶら下がるようにして、夫婦、親子、同僚とのドラマが絡みついている。多くのサイドストーリーを取り込んでそのたびに物語が膨れていくので、全体にゆっくり進み、そのせいか謎解きとしての鋭さがまるでない。絡み合ってるドラマをほどいたら、良質の短編が三、四編書けそうに思う。

いつものシンプルな筆致と絶妙な行間のみで、読者を作中に引きずり込む手腕は巧いと思うが、今回は凝りすぎた分、全体に間延びしてバランスが崩れたような気がする。膨れ上がった挙句に、何かが押し潰されてしまったとでも言うのかな。

謎解きも難しくなく、さり気に巻かれたヒントから全体の構図を読み解くのに時間はかからない。終盤にお仕事モノとしての山場を見せられ若干辟易した後に明かされる真相は予想通りだが、点が線に繋がる種明かしはやっぱり巧いと、最後で救われた気になった。

ストーリーを構成する要素が多岐に渡っているので、仕事人として、家庭人として、主人公の境遇に共感できる読者は多いんだろうなー。静かなる熱い再生の物語です。
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